深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

11-12.冷凍のミくじら

 焼酎飲みには欠かせず、忘れられないのが「冷凍身くじら」(図2)である。卓に出されて食べるころ、冷凍がとけ出し、赤い血も少し滲み出てくるころ、少し凍った状態のくじらが熱燗の焼酎にはよくあう。「冷凍身くじら」だから「れいみ」と言うのだそうだが、筆者は知らなかった。この刺身用冷凍身くじらは、クジラの背肉や腹肉などの脂肪の少ない赤身肉の部位で、生産量の三分の一以上を占めるそうである。かつての学校給食の鯨カツや竜田揚げにも供給された。図1は塩クジラであるが、人吉球磨地方のオカズとして、肴(さかな)として、タンパク質源としても最高の保存食であった。とにかく塩辛かったことだけは今でも覚えている。塩辛かったことについて、長崎の鯨愛好家の方のブログである。

塩クジラ 冷凍くじら ガラとチョク
図1.塩クジラ 図2.冷凍クジラ ガラとチョク

 「長崎で塩くじらと言えば、鯨の畝須(うねす)を塩漬けしたものです。福岡で塩くじらと言えば、鯨の赤肉(赤身)を塩漬けしたものです。長崎には馴染みの無い、赤肉の塩くじらを食べてみました。この塩くじら(塩赤肉)は、福岡県田川市などの「筑豊地域」や北九州の炭鉱の町で働く 男達の貴重な塩分補給、タンパク源として文化が栄えたそうです。これは、ヒゲ鯨類のミンク鯨を使っています。塩が吹くまで焼いて、お湯に浸して塩抜きをします。ご飯のお供、お茶漬けにすると、なかなか香ばしくピッタリです」。

 筆者の妻は、ときどき、お宅のご主人は九州の方ですか?と聞かれるたことがあるそうである。くじらを買ったときである。くじらといっても、最近では塩鯨や冷凍身くじらは手に入らず、「ベーコン」や「おば雪」を買ったときである。「おば雪」は東京では「さらし鯨」などと呼ばれているもので、鯨の尾の部分の肉を塩漬けにして薄くスライスして湯通ししたもの、からし酢味噌などでたべるのだが、筆者は好物である。

 九州では、なぜくじら肉が売られ、よく食べられるのか、海から遠い山間地の人吉球磨地方で、なぜ海の幸のくじら肉がたべられるのか確かに不思議であったが、これにもやはり訳があった。
江戸時代、長崎の出島が日本で唯一の外国との窓口だった頃、長崎の町には全国から多くの人たちが集まり賑わっていた。しかも、当時、九州地区のクジラはすべて大村湾にある東彼杵(ひがしそのぎ)に水揚げされ、そこで解体されたものが九州各地へと運ばれていったのだそうである。長崎の鯨食文化もそのまま伝承されたというわけである。

休み②

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